一般に大気圧は、空気の柱が上空まで続いていて、その重さが下の空気に加わっていると教えられている。金星の重力は地球とほぼ同じ8.9m/s2なので、重力が大気圧を作っていると考えれば、90倍の高さまで大気が存在することになる。
地球では、およそ30km付近で気圧がほぼゼロになる。90倍なら、2700kmだが、圧縮を考えれば数倍の高さまで金星大気が存在するはずだ。ところが金星大気の鉛直分布を見ると80km付近でほぼゼロになる。50km付近では1気圧で地球と同じ。大気圧の分布で見ると、地球の2,3倍程度の高度までしか大気が存在しない。
金星の地表から50kmの間に地球の90倍の圧力を生むメカニズムがあると考えられる。重力であるとは考えにくい。金星の重力は地球の0.9倍しかないのだ。以前、地球大気の圧力は電位差によるものと書いた。おそらく金星の大気圧が高いのは、地表と電離層の電位差によるものだろう。金星は磁場はないものの、大きく尾を引いていることが観測されている。金星の持つ電荷は大きいのだ。
ところが単純に電気引力によって空気分子が地表に引き付けられるのでは、重力とメカニズムは変わらない。大気の場合、上層ほどイオン化の程度が大きく、大気の電気抵抗が低いという特徴がある。大気上層は宇宙線によりイオン化されているからだ。そのため、大気中の電位差は、地表に行くほど大きくなって、上層では少なくなる。地球では50km付近では30万ボルトで一定になる。
この大気電位の大きさが大気の圧力差を作っている。一様な電場では、電気力線中に置かれた電荷は、同じ力で引き付けられるが、電位差がある電場では、電位差が高いほど引き付ける力が強くなる。電気引力の勾配が、圧力差として現れるのだ。調べた範囲では、金星の大気電位のデータはなかった。しかし、90気圧の圧力を作る電位差がきっとあるはずだ。
追記:20180909
電位差の大きさを示す観測データがあった。
"The electric wind of Venus: A global and persistent “polar wind”‐like ambipolar electric field sufficient for the direct escape of heavy ionospheric ions"