電荷に力が加わると電界の変動により磁界が生じる。アンペールの法則だ。通常は、銅線に電流を流すと周囲に生じる磁界で説明がされる。これを電子で説明してみよう。
電子1個は、こんな具合に電界を周囲に広げている。
この電子に力を加えてみる。すると電界の移動により、電位差が変化する。この変化が磁界を生むわけだ。磁界には、理由は不明だが、円周の接線に沿って力が生じる。この力が通常磁力線と呼ばれる。
電子1個という最小単位で生まれる磁力線にはすでに方向がある。これがモノポールが存在しない理由だ。
通常は1本の銅線に電流を流すことで磁界が生じると説明されるが、電子1個から発生した磁界のベクトルが無数合算されて、銅線の周りに現れるのだ。
電流の流れは、電子の移動により発生した電磁波が原因だ。もう少し詳しく説明すると、物質中に自由電子があったとき、電圧を加えられると、電界が現れる。自由電子はプラスの電界に引き寄せられるが、金属結晶中では、自由電子の移動を邪魔するもの―格子欠陥などが存在するため、少し動いては止まり、また動くを繰り返すことになる。このこまごまとした電子の動き、加速、減速が銅線の外側に電磁波を生じさせ、電流となる。減速の際には前方に電磁波が生じるが、全体で見ると電子はプラス側に移動するので、電磁波は後方、すなわちプラスからマイナス側に流れていくことになる。
電子1個から生じる磁界が無数に集合したものが、銅線の周りに現れる磁界ということになる。電子1個を考えると、磁界にはN極S極はまだない。そこで、銅線を巻いたコイルを考えてみる。コイルの断面を見てみよう。電流は左では手前から向こうへ、右は向こう側から手前に流れている。
コイルに巻かれている銅線が多数重なると、コイル内部と外で磁界の方向が同じになるため、ベクトルが合わさる。隣のコイルとの境界では、磁界の向きが逆なので、力が打ち消しあう(力が打ち消すのであって、磁界同士が打ち消すのではないことに注意)。N極S極は、電子1個から生じた磁力線のベクトルがびよーんと引き伸ばされたものであることがわかる。
しかしもうひとつ疑問がある。電流は銅線の外側にできる電磁波であると説明した。すると磁界の次に電界ができているはずだ。磁界が生じていることは、銅線の周りに方位磁石を置けばわかる。ところが電界はどこにあるのだろう?
なんだか、核心に近づいてきたような気がする。
続く…