星野通平博士の著書に「地球の半径」がある。地球科学の変遷を丁寧にたどりながら、おしまいのほうで自説である地球膨張について述べられている。
「わたしは、ささやかな地球膨張論者である。上部マントルが部分的に溶けると、溶けた物質は親の岩石より密度の小さな玄武岩質マグマになって膨張し、岩石圏の割れ目を通って、地表や海底にあふれたり、表層の岩石層の下にもぐりこむ。溶ける前の母岩に比べて、それから生まれる玄武岩質マグマの体積は15%も大きい、という見積もりがある。玄武岩質マグマが冷えて固まっても、もとの母岩の体積に戻ることはない。これが地球膨張の仕組みである。」
これは岩石学の研究成果から導き出された岩石の性質だ。シリコンSiと酸素Oは、太陽系では比較的豊富な元素で、岩石の骨格を作る。もっとも稠密な結合はSiO6でスティショフ石として知られている。非常な高圧化で形成されると考えられ、地球内部では下部マントルがスティショフ石で占められている。
SiO6は、結晶構造が密になっているが、相転移でSiO4、SiO2に変化することが知られている。SiO4はカンラン石でマントルの成分だ。SiO2は花崗岩、玄武岩の主成分で、地殻を構成する岩石の大部分は、これだ。
SiO4からSiO2への相転移の一例として、蛇紋岩作用が知られている。蛇紋岩はカンラン石が水を取り込んで変質することでできると考えられている。
2Mg2SiO4+ 3H2O-> Mg3Si2O5(OH)4+ Mg(OH)2
蛇紋岩作用ではカンラン石に水が反応するとしている。しかし太陽系でもっとも豊富な物質はメタンだ。地球内部にも大量に存在する。スティショフ石がメタンと反応すると水と二酸化炭素ができる。金星、火星の大気は二酸化炭素だ。
2SiO6 + CH4 → 2SiO4 + CO2 + 2H2O
SiからOが2つ離れるが、このとき、電子が放出される。カンラン石の相転移でも電子の放出が起きる。つまり、地球内部は、巨大な電池なのだ。この電子は自転の遠心力で地殻に向かって移動する。地球内部の電子は、シューマン共振、磁場、重力の源になる。
膨張に戻ると、SiO6からSiO4->SiO2と相転移を繰り返して、元の体積の約8倍になる。じっさいにはもっと少ない膨張になるだろうが、星野通平博士の15%は非常に控えめな数字であることがわかると思う。
地球が膨張を続けて現在の大きさになったとして、元の大きさはどの程度なのだろうか? 電気的地球科学では、地球は小惑星、彗星を原料に木星内部で作られた。木星の最大の衛星はガニメデだ。半径は2630km、これが最大8倍に膨張して、内部が空洞になったと考えると、地球の固体部分の厚さは約1500kmになる。
ところで、地震は700km下で起きることがある。これ以上深い場所で地震が起きないのは、マントルがやわらかいためであると考えられている。深発地震が700kmより深い場所で起きないのは、それ以上深い場所に、何も存在しないからだと考えるのはあまりに非科学的だろうか?