電波は大気中の分子を媒介にして伝わる電界のパルスであると考えている。では、アンテナはどのようにして、分子により伝えられる電界を同軸ケーブルに取り込むのだろうか?
ダイポールアンテナはもっとも良く使われるアンテナだ。波長の1/2の長さの銅線で作られる。同軸ケーブルが真ん中にあるので、片側は1/4波長になる。この銅線に平行に電界のパルスが来ることを考えてみる。アンテナに対して平行にやってくる電波がもっとも感度が良いからだ。
片側の銅線だけを考えてみると、電界の濃淡が一様に銅線を荷電させる。このとき、空気分子から銅線内部の電子に電界が移動するのは、遠隔作用だ。このままでは電荷が同じなので、銅線には電流は流れない。
もう少し銅線内部の電子を考えてみる。一番端にある自由電子がもっとも高い電界を受けたとする。受けた瞬間は銅線内部の電界が一様なので、電子は移動しないが、次の瞬間、少し弱い電界が銅線に伝わる。高い電界を受けた電子は弱い電界のほうに向けて少し移動する。銅線内部の電界は、電波の電界によって強くなったり弱くなったりを繰り返す。弱い電界に向けて自由電子が移動するが、1/4波長の距離を移動する時間と電界の谷間がアンテナの中心にくるタイミングが合うと、もっとも高い電界が同軸に流れる。これが共振現象だ。
通常、銅線内部を電流が移動する速度は、大気中を電波が進む速度より遅い。この速度の差は、アンテナを設計するときの短縮率に現れる。アンテナの長さは、光速度を周波数で割った波長より、少しだけ短くなる。アマチュア無線では経験的にダイポールアンテナの短縮率が0.9程度であることを知っていた。
アンテナが電波を電圧に変えるメカニズムは、電波が波のようにやってきてアンテナに当たる説明が多いが、電界のパルスで説明すると理解しやすいのではないかと思う。