相対性理論が破綻していることははっきりしているが、電場の速度を計測した実験は珍しいので紹介しておきたい。
Measuring propagation speed of Coulomb fields
通常、電場は変化のない静電場で考えられることが多い。しかし、電波は電場の変化であるし、光も同じだ。この論文の冒頭には次のように書かれている。
「ニュートン、ラプラス、そして比較的現代では、エディントンは、重力が有限速度で伝搬すると、太陽の周りの惑星の動きが不安定になると指摘しました。重力相互作用のタイムラグに起因するトルク。このような奇妙な振る舞いは、一様に移動する電荷のセットによって生成される電場の伝搬を計算するとき、電磁気学でも見られます。実際問題として、リエナール・ワイハルトの遅延ポテンシャルは、電場が無限の速度で伝播すると仮定して得られたものと同じ式につながります。この明白なパラドックスに対するファインマンの説明は、均一な運動が無期限に続くという事実に基づいていました。そのような説明を検証するには、均一に移動する電子ビームによって生成される電場の時間/空間進化を測定する実験を行いました。有限寿命の運動状態で得られた結果は、ビーム自体によって固定された電場と互換性があります。」
相対性理論では光より速いものはないとしているが、相対性理論以前は、「重力が有限速度で伝搬すると、太陽の周りの惑星の動きが不安定になると指摘しました。」とはっきり光速度より重力が速いと考えていた。正確に言えば、重力の伝搬には時間がかからない、つまり一瞬で伝わるということだ。ここに出てくるエディントンは、天文学者のアーサー・エディントンで、相対性理論を証明するために日食観測をした人物だ。しかしエディントンは結局重力は光と同じ速度であると結論したらしい。
重力が光速でしか伝わらないとすると、太陽系の公転がおかしなことになることは、トムヴァンフランダーンの「重力の速さ」でも指摘されている。この論文では重力と電場との関係には言及していない。
実験の方法は、500MeVの電子ビームを数ヘルツの間隔で発射して、少し離れた位置にある銅の棒に生じた電位を計測するというものだ。電波の速度を計るのと同じだが、測定の対象は電位なので、電場の速度ということになる。計測はかなり複雑だが、想定される誤差、電場の伝搬などを考慮している。そして得られた結果がこれ。
予想というのは、電場が光速度で移動した場合の時間だ。すべての実験結果ではないが、明らかに予想よりも早い到達時間が計測されている。誤差だろうと考えるかもしれないが、ns(ナノセカンド)は現在の計測技術では、きわめて正確に測定できる範囲だ。1nsは非常に短い時間と思うかもしれないが、パソコンのCPUは1ns以下のクロックで動作している。1nsはCPUで言えば1GHzに相当する。10年以上前の技術なのだ。この表では100分の1、10psの精度で測定している。10psとは100GHzに相当するが、現行のパソコンのクロックが10GHzにせまる速度であることを考えると極端に速い領域ではないことに気が付くはずだ。
電気的地球科学では、電磁波は荷電粒子を媒質にして伝わると主張してきた。電場も荷電粒子を伝わるが、1個ずつ順番に伝わるのではなく、密集した気体分子の中を、1個ずつ、あるいは数個飛ばして伝わったり、その過程はかなり複雑なことが予想される。光速度の測定でも、正確に測定するとその結果にばらつきが多いことが知られている。伝達する過程がばらつきを生んでいる。
電場の場合も同じだろう。電子ビームをパルス状に発生させれば、そのパルス間隔で電場が発生するので、それは電磁波にほかならない。この実験の計測値で現れた誤差は、計測の誤差ではなく、電場の伝達過程で生まれたばらつきであると考えたほうがいいのではないだろうか? するとこの実験は空気中における電磁波の伝達過程を計測したと見ることができる。