K-中間子と二つの陽子からなる原子核の発見というレポートを見つけた。簡単に説明すると、ヘリウム3にK中間子をぶつけると短時間であるが、陽子2個をK中間子が結び付けた状態になるというのだ。
この説明では、なぜこのような状態になるのか説明できていない。図では陽子2個とK中間子が一つの原子核を作っている様子が描かれている。しかし、陽子と陽子、陽子とK中間子の間に働く力は単純に同じ「バネ」として描かれている。原子核内部の構造に言及していないのだ。また、K中間子が選択的に中性子にぶつかり、それを弾き飛ばすというメカニズムも不明だ。なぜ陽子にぶつからないのか? K中間子はマイナスの電荷をもつと考えれば陽子にぶつかるほうが確率は高いだろう。
K中間子は原子核内部に入ると急に核力を発揮するのだろうか? K中間子は、パイ中間子よりもエネルギーは大きいが、崩壊する過程でエネルギー、ニュートリノを放出しながら、ミュー粒子、パイ中間子、電子などに崩壊していく。K中間子もパイ中間子と同じ電子が励起した状態と考えられる。
そこでSEAMでこの現象を説明してみる。SEAMでは、ヘリウム3は陽子が3個直列にパイ中間子で結合した状態と予想している(a)。ヘリウム3にK中間子が近づくと、K中間子のマイナスの電荷に対して、外側の陽子のプラスが引き付けられるため、K中間子は外側の陽子にぶつかるだろう(b)。
K中間子が陽子にぶつかると衝撃が反対側の陽子に伝わる。このとき、反対側の陽子と真ん中の陽子を結合させているパイ中間子がK中間子との反発力で飛び去る(c)。これが中性子として観測される。
残ったK中間子がくっついた陽子2個+パイ中間子がK中間子核(X-pkk)となる。X-pkkはおそらく電気的に中性として見えるはず(d)。X-pkkは非常に不安定なはずだ。片側にくっついたK中間子が反対側の陽子を引き付けようとしており、結合している電子に対して反発力を発揮する(e)。そのため、短時間でK中間子の反対側にある陽子+電子は飛び去ってしまう。陽子+電子はすぐに崩壊するため陽子だけが観測される。残るのはラムダ粒子になるが、これもすぐにパイ中間子と陽子に崩壊する(f)。
原子核の構造を前提にすれば、K-中間子と二つの陽子からなる原子核の発見はきわめて力学的な現象として捉えることができる。