量子力学の最初に出てくるのが、プランクの量子、光量子仮説、ボーアの原子模型、波動関数、量子跳躍、パウリの排他律、不確定性原理、シュレディンガー方程式といった一連の概念だ。一つでも欠けると量子力学は成り立たない。でも、これらが生まれたのは、いずれも中性子が発見される以前であることにほとんどの人は気が付いていないのではないか?ニュートリノが発見されるのは、このずっとあとになる。そして不思議なのは、そうした意味が後付けのように付け加えられることだ。
不確定性原理がその代表例で、シュレディンガー方程式が主張された後、確率波が収束するのはいつなんだ?という疑問を解決するために考えられた。シュレディンガー自身は自分が主張している方程式が現実の現象とどのようにリンクしているかは考えなかったようだ。それもそのはずで、シュレディンガーは統計力学を1個の粒子に当てはめただけだったからだ。ネコを持ち出して、その矛盾を指摘したり、晩年は「量子力学は統計力学から生まれ、統計力学に帰る」と言った。
ドブロイの波動関数はアインシュタインの光量子仮説という曲がりなりにも根拠があった。波と考えられている光が粒子の性質を持つなら、粒子とされている電子が波の性質を持ってもいいではないか?論文を読んだアインシュタインが納得したらしい。
しかし、パウリの排他律と量子跳躍ではこの仕組みを説明できなかった。現在でも、シュレディンガー方程式から導出できると主張されるが、そのはっきりとした仕組みは説明されていない。
量子跳躍の根拠はバルマーが発見した輝線スペクトルだ。希薄な水素などのガスをガラス管に入れ、高電圧をかけると発光するが、そのときのスペクトルが飛び飛びの波長をとる。この原因は軌道電子の取る軌道半径が飛び飛びであるからだと主張された。ボーアの原子模型とラザフォードの原子模型の大きな違いだ。なぜ飛び飛びの半径を持つか標準理論では現在でもわかっていない。SEAMでは原子核にニュートリノが入射する際に放射されるガンマ線の定在波が原因だと主張している。
パウリの排他律は同一軌道上に同じスピンをもつ電子は入れない、というルールだが、これも理由が定かではない。電子のスピンは最初電子が自転していると想定されたが、途中から自転という物理現象ではなく、数学上の概念に変わった。なぜ自転から概念に変わったのかと言えば、磁場が発生する状態では電子の自転速度が光速を超えてしまうからだ。また、電子の大きさが確定できなくなったこともある。古典物理では電子の半径は明らかだったが、量子力学では不定になってしまった。これも電子が確率分布として捉えられるようになった結果だ。
なぜ同一軌道に同じスピンをもつ電子が入れないのか? SEAMなら答えは簡単だ。まず、原子核のプラスとマイナスにゆるくつながれた電子が、ガンマ線の定在波の谷間に落ち込んでいる。このゆるい束縛された状態で電子は周囲からの電磁波の影響で小さな半径で回転する。これがスピンだ。電子は周囲の電子に対して、反発するので、一番近い電子とは反対側に回転する。たとえば、もっとも内側の軌道では原子核を挟んで2個の電子が小さな半径でスピンするが、このとき互いに電気的反発力を及ぼし合うので、スピンは異なる向きになる。幾何学的には非常に複雑な軌道を描くことになるだろう。複数の要因から軌道電子はカオスの状態にあると考えられる。予想するのは難しいが、けっして霧や雲のような状態ではない。
電子軌道は原子量が増えるほど複雑になる。原子核の構造も球ではなく、凸凹になっていくからだ。
量子もつれはその根拠となったパウリの排他律を無視するように、まるで魔法のルールとして考えられている。量子もつれという言葉をネットで見るたびに量子力学の迷宮の深さを感じざるを得ない。