アナククラカタウ火山の津波についてもう少し書いておく。じつは筆者は地すべりの専門家ではないが、専門家と同じくらい地すべり現場を見た経験がある。そこで気になったのは、アナククラカタウ火山が噴火した後の23日の画像だ。
赤い線が崩壊したとされる部分だが、前の記事で示したように噴火前の島の形状と比較すると崩れたのはほんの少しか、あるいはほとんど崩れていない。
青い線は筆者がいれたもので、くぼ地になっている。この地形は地すべり地でよく見られるもので、下側の土砂が移動することで斜面が窪むのだ。
上の図の⑤、線状凹地と呼ばれる地形で、大規模な地滑りではよく見ることが出来る。地すべりにも滑るときの速度の違いがある。がけ崩れのように一瞬で滑る場合もあれば、比較的ゆっくりと滑る場合もある。しかし、この地形が現れるのはまだ全体がすべっていない時で、滑る速度も速くない。
線状凹地が現れるのは、斜面の土砂が内部で移動している時で、比較的移動した土砂は多くないのだ。速度も速くないと予想される。海中に落ちても津波が起きるような速度ではない。
もうひとつは、噴火は海底で起きたという報道だ。最初に津波の報道があったとき、地震がないこと、海底で噴火が起きたと伝えられたと記憶している。最初の記事は見つからなかった。Gardianの記事はその後、何度も書き換えられているらしい。23日の画像で分かる通り、この時点では島の大半はそのまま残っているが、その後の海底噴火に飲み込まれ、島は一度完全になくなる。セントヘレンズ山、磐梯山のように山体が吹き飛んだのだ。しかし、これほど激烈な崩壊があったのに、津波は観測されていない。最初のわずかな崩壊で津波が起きたのなら、島全体がなくなるほどの崩壊ではもっと大きな津波が起きてもおかしくないはずだ。
やはり、津波が起きたのは噴火が海底で起きたときの電流による放電が原因と考えたほうが良い。海底にマグマが放出されると、最初だけ大きく放電が起きるようだ。ハワイのキラウエアでは長い距離をマグマが流れていくうちに電流が周囲に拡散するので、海に入っても放電は起きない。アナククラカタウ火山の噴火では火山雷が良く観測されているので、流れている電流も大きいことが予想できる。