Category: 破壊学
複眼式望遠鏡
July 7th, 2009昆虫の複眼は、複数の目が同じような画像を捉えていると思われている。こんな感じだ。Bugs for Thugsより。

ところが複眼は、次のような構造を持っている。SPIEより。

もう少しモデル化するとこうなる。Daily Techより。

つまり複眼は、ひとつひとつの個眼が非常に狭い視野を持っていて、それが数百から数万個集まって全体の視野を構成している。個眼ひとつの受光細胞は、非常に少ないので像というよりは、明暗がわかる程度だと思われる。
デジタルカメラのCCDは平面状に受光素子を数百万個持つが、それぞれの素子にレンズをつけて、半球状に配置したのが複眼だといえる。
ところで望遠鏡はなぜ大きく見えるのか? それは視野が狭いからだというと間違いだろうか? 遠くのものは、視野に占める面積が小さい。レンズにより、その面積を大きくしているために、望遠鏡では遠くのものが大きく見えるわけだ。
デジタルカメラには、CCDの素子ひとつに対応する画素を増やして、ソフト的に拡大する機能が付いている機種がある。これを考えたときに浮かんだのが、複眼構造をもつ望遠鏡だ。
非常に細長い筒を通して、対象物の光を受光する。1つの筒で1個の画素を受けるので、全体の像をつくるには、筒が数万本必要になるだろう。
複眼式望遠鏡の利点は、レンズを用いないので色収差がないことである。筒の精度さえ保てれば、メンテナンスも不要だ。宇宙空間で使う望遠鏡にぴったりだと思う。
難点もある。筒の直径と長さで解像度が決まってしまう。高解像にするためには、筒が大量に必要となる。筒の直径を狭めると、回折が起きてしまう、など。
10X10の画素ならすぐに作れるような気がするけど、いまのところアイデアだけ。
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作った人がいた! 世界は広い!
米研究者、昆虫の複眼から原理を得た歪みがない革新的な新方式のカメラを開発
https://www.afpbb.com/articles/-/2942005
電波を曲げる
April 21st, 2006昔々、CQ誌に電波を曲げる実験というのが載ったことがあった。八木アンテナを2段スタックにして、下側の八木から少しだけ波長の短い電波を出すというものだった。そのレポートは「USO800」とつけられてあって、エイプリルフールにちなんだ記事だったことが次の号で知らされた。今だったら、どんな批判が飛び出すかわからないが、のんびりとした時代だったのだろう。
ところで、電波を曲げることはできる。強力な重力場で電波、電磁波は曲げられる。また媒質の屈折率が異なる境界でも曲がることが知られている。正確に言えば、曲げるのではなく、反射によって電波の方向が変えられることは、電離層での反射がそのよい例だ。電離層は太陽からきた太陽風により、大気分子がイオン化した状態だと考えられている。
雨上がりの夕方、最上川を渡る車から、風車が回っているのが見えた。遠くには雨雲がかなり低く垂れ込めている。雲の裂け目から所々に青空が見えている。何気なく見ていた光景から、ぴんとくるものがあった。「電波と同方向にレーザー光を発射して、大気を電離させることができたら、好きなようにEスポを作れるのでは?」
さっそく帰宅してから検索してみると、レーザー光による誘雷実験というものが引っかかってきた。雷が鳴りそうな電位差の大きな大気中に、強力なレーザーを放射すると、レーザーの通り道の大気が電離して、誘雷するというのだった。実験は一応成功したらしい。雷が落ちるくらいの低空で電離させても、あまり遠くに電波は反射しそうにない。10キロ、100キロの高空で電離させることができたら、面白いだろう。でもこの実験をやるには、相当な費用がかかりそうだ。とても個人のレベルでできる実験ではない。どっかでやってくんないだろうか。