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現代オーディオの弱点
November 27th, 2016日本ではすでにオーディオブームは去ったと思っていたが、一部のマニアはより深く、オーディオを探求しているようだ。ネットを見るとあちらこちらにオーディオ関係のページを見ることができる。
筆者も昔オーディオ店でバイトをしていたことがある。ただの店番だったが、当時の高級オーディオに触れる機会があった。マッキントッシュ、JBLパラゴン、アルテックなどを暇なときに聴いていた。近所のジャズ喫茶にもよく行った。そこにはJBLの4350が置いてあって、バイトで肥えていた耳にも、いい音だということがわかった。
いい音というのは、難しい。HiFiは原音に忠実という意味だが、クラシックを除けば、ほとんどの音楽には、すでに電気回路が含まれているので、原音の歪まで忠実に再生するのが、いい音なのかという疑問もある。いまでは音源のほとんどを電気的に操作している音楽が多いので、HiFiといい音との垂離が大きい。
しかし変わらない音源がある。ひとの声だ。多少エコーをかけたりしている場合もあるが、人間の声は、オーディオを判定する際の重要な指標になる。普段、生の音楽を聴く機会の少ない人でも、ひとの声は日常的に聴いている。声に対する経験値は、ほとんどの人が高い。
ところで、オーディオは、技術的に進化してきた。真空管からトランジスタ、A級増幅からD級増幅、デジタル処理などが、オーディオの質を向上させてきた。しかし、エジソン以来変わっていない物がある。スピーカーだ。
スピーカーは紙の膜を磁石で振動させ、空気の圧力差を生み出す。100円ショップのスピーカーから、数千万円の高級オーディオまでこの原理は同じである。スピーカーの欠点は、多数の合成波形であるオーディオ信号を、ひとつか多くても3つくらいのスピーカーで再生するところにある。
たとえば、ピアノとサックスのジャズを録音すると、2つの楽器の合成波形を電気的に得る。これを再び空気の振動に変えるとき、おかしなことが起こるのだ。
スピーカーが1つのシングルスピーカーで考えると、数十ヘルツの低音から20kHz近くの高音まで、同じ紙の膜で空気を振動させる。このとき、起こるのは、最も低い周波数で振動する膜の上に、高い周波数の振動が乗っている状態になることだ。
オーディオを聴くときに、楽器が録音した位置で聴こえてくることを、分離がいい、定位が優れている、とかいう。しかし前述のように低い周波数の振動上で高い周波数の振動が生じている状態では、それぞれの音源は、混ざり合った状態としてしか再生されないことは明らかだ。どんな高級スピーカーでも原理的に、元の音源とは異なる波形としてしか、空気を振動させることができない。定位はステレオの特性だが、分離はモノラル録音でもわかる。はっきりとわかるのは、ひとの声、ボーカルを聴いたときだ。
現代オーディオの弱点とタイトルを付けた理由だ。では解決策はあるのか、といえば、YESである。続く